伝わったかな? 遊歩君の話

海沼栄造先生が開いている経堂の私塾「悠愉学舎」で
高校一年の三人の少年と
「筋道を通して話す・書くための体験學」
「こころのさいころ」の授業をした
まずは遊歩(ゆうほ:左奥)の話から

















私は2008年某日、埼玉県大宮駅横の貨物車輌所を訪ねた。楽しかった。
なぜなら、工場棟に入ってすぐに、エンジンを降ろしたディーゼル機関車が見え、
普段聞こえる金属・機械音の代わりに、子どもたちの元気な声も聞こえ
ディーゼル用のオイルや鉄のたまらぬにおいもしていたからだ。
一般公開されていたEF58を見た横の人が
「ゴーハチだ」と思わず洩らす声も①聞こえた
機関車を触ったときの冷たさは、②筆舌に尽くしがたい
おそらく忘れないだろう。
普段は工場の関係者しか入れないような我々にとっては、
神聖な場所でのこのような経験が出来て③嬉しかった


① すでに数行前で「聞こえ」という言葉を使っているよ 
  こんな短文なので別の言い方ができるといいね
   
  「洩らす声も 見知らぬ人ながら同志として近しさを感じた」はどうかな

② 「筆舌に尽くしがたい」をどうやって伝えることができるか
  そこを今 私たちは學び始めた
  君の鉄道への熱い思いを伝えられる言葉に
  いつか出会えるといいね
  
③ 最初に君は話の大まかな輪郭を
  「だれが」「いつ」「どこで」「なにをしたか」で書き始め
  最後の「どんな思いを持ったか」については
  「楽しかった」と結んでいる
  そしてその理由を「なぜなら」に続けて
  視覚・聴覚・嗅覚・味覚(この場合は言葉のやりとり)
  触覚にも訴えて 詳細に語っていて説得力があったよ
  ところが最後に来て「嬉しかった」で話を締めくくっている

  「楽しかった」ことの理由を書いたはずが
  「嬉しかった」で終わっているのは首尾一貫に欠けている
  君は「楽しい」と「嬉しい」という言葉を
  同じ意味で使っているのだろうか 
  もしそうではないのなら最後はたとえば
  「普段は工場の関係者しか入れないような
   我々にとっては神聖な場所で
   これら五感のすべてに刺激を得る体験をした一日は
   本当に楽しかった」と結んでみるとどうだろう
  君の言葉でもう一度書き直してごらん

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憧れの「埼玉県大宮駅横の貨物車輌所」で
工業高校の一年生として
技術屋の卵となった彼らしい垂涎の体験に
全身で感動しつつも
二人の妹の兄であるせいか
「子供達の元気な声」が聞こえたことを
ほほえましく思い出している


授業の始めから机の上に出してあった『鉄道ファン』誌上で
遊歩は 特集されていた「埼玉県大宮駅横の貨物車輌所」を
控えめながら 目を輝かせて私に差し出し見せてくれた


各週高校生を対象にして開くこの授業に
私は「わたし と たいわ」と名付けた
自問自答しながら思いや考えを言葉に繋げていくための
体験の場だ
遊歩の遊歩による遊歩のための「自分創り」を
私は楽しみにしている
芳知(よしとも)幸樹(こうき)の話は 
またのお楽しみに

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